成果主義はなぜ失敗しやすいのか。プルデンシャル生命の不正から考える
成果主義は一見すると合理的ですが、導入を誤ると組織を壊します。プルデンシャル生命の不正事件は、その危うさを象徴しています。
成果主義が組織にもたらす歪み
プルデンシャル生命保険が、顧客から計31億円をだまし取っていた不正事件が発覚しました。

すべての企業に当てはまるわけではありませんが、成果主義は安易に導入すると、うまくいかないケースが多い制度です。
成果だけを追い求める構造になると、人は「どう価値を生むか」よりも「どう評価されるか」に意識が向きます。その結果、社員育成が進まない、失敗を恐れて挑戦しなくなるといった状態が生まれます。
社内では短期的な数字が優先され、周囲を助ける行動や長期視点での改善が評価されにくくなります。こうした積み重ねが、組織の空気を少しずつ悪化させていきます。
プルデンシャル生命の制度と不正の関係
今回のプルデンシャル生命の報酬体系は、成果報酬色が非常に強く、ほぼ完全歩合に近い制度ということです。
会社が競争を前提とした仕組みをつくり、成果を出し続けなければ生き残れない環境を用意した結果、億単位で稼ぐ社員を「神様」扱いするような企業文化が醸成されてしまった。また、不正が個人の問題では済まされない規模で発生させてしまったわけです。
成果主義そのものが絶対悪だとは思いません。
ただし、人の行動は制度によって大きく左右されます。評価基準が曖昧なまま成果だけを求めれば、短期的な数字を優先し、顧客視点や倫理観が後回しになるのは自然な流れです。
実際、過去に成果主義を導入し、数年後に制度を見直したり、もとの評価制度に戻した企業も少なくありません。
成果主義を導入するなら必要な視点
成果主義を導入するのであれば、評価基準を明確にすることはもちろん、報酬体系だけでなく人事制度全体を見直す必要があります。
「どんな行動を評価するのか」「どんな働き方を期待しているのか」を言語化しなければ、制度は機能しません。
また、制度導入の目的や内容を社員に丁寧に説明し、評価する側へのトレーニングを行うことも不可欠です。
成果主義は短期的に結果を出すための制度ではなく、中長期で組織を育てる前提で取り組むものです。
それにもかかわらず、「モチベーション向上」といった理由を掲げながら、実際は人件費削減を目的に成果主義や年俸制を導入する会社もあります。
そうした会社ほど、就業規則や福利厚生は旧態依然のままで、社員のモチベーションは低下し、離職率が高まっていきます。
制度は本来、人を追い込むためにあるものではありません。
人が健全に働き、長期的に成果を出し続けられる状態をつくることこそが、人事制度に求められる役割だと思います。

